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コンサルティング

2023/01/01

発電所のパネル交換・増設とパワコン交換の比較評価(A. 単相低圧)

2022年8月17日に資源エネルギー庁で開催されました「(第44回) 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」のテーマである「再エネの大量導入に向けて(全50ページ)」の37~43ページには「太陽光発電設備のパネル張り替え/増設」における現行ルールの見直し(案)が発表されました。

今回はモデル発電所(低圧、単相)を例に、パネル増設・リパワリングの比較評価をした結果をまとめました。FIT単価の価格変更式は、下記の見直し(案)にて試算・評価しております。

<価格変更式>

A. モデル発電所 単相低圧:

(a) 太陽光モジュール: 多結晶250ワット、288枚、パネル出力の合計72,000ワット。初年度劣化率: 2.5%、経年劣化率: 0.7%。

(b) パワーコンディショナ: 単相5.5kW(入力回路数4、MPPT回路数1)、9台。変換効率: 96.0%。

(c) システム条件: 8直列 x 4回路入力、32枚、8,000ワット。DC/AC比率 145.45%。

(d) その他: 方位角南向き0°、架台傾斜角10度または30度、システム効率97%。

表1. 日本全国(49か所)の20年間の毎年の発電量推移:

備考: 弊社発電シミュレーション試算。日射データ(MONSOLA-11及びMETPV-11)及び各地の気温データを基に、パワコンのピークカット計算を1時間毎に評価して算出。

10年経過後のモデル発電所(A. 単相低圧)を11年目に改修・増設した場合について、3パターンにて試算・評価致しました。

改修案A-1:

  • 同サイズ(1640mm x 992mm x 35mm)の高出力モジュール単結晶315ワットに全数(288枚)交換した場合。
  • パネル出力の合計72,000ワットから90,720ワットに増加。
  • 初年度劣化率: 2.5%、経年劣化率: 0.7%。
  • パワーコンディショナ、システム構成、架台は変更せず。
  • FIT単価継続容量: 72,000 ÷ 90,720 = 79.37%
  • FIT単価変更容量: 18,720 ÷ 90,720 = 20.63%
  • 追加となるコスト: 単結晶315ワットモジュール x 288枚+モジュール交換費用

表2. 改修案A-1 (全国平均):

シミュレーションで試算した結果、残り10年間の発電量は約30%増加となりました。 一方FIT単価・売電金額相当分は、既存FIT単価適用分は約3%増、新単価適用分が約27%増となります。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約295万円増、約9.8%の増加率となりました。

11年目以降も発電量が良好な北海道帯広の場合、下記の通り既存FIT単価売電分が減少するという評価になりました。パワーコンディショナの定格容量(49.5kW)に対して、11年目以降も十分な発電量があるため、増設による発電量のアップ量の割合が少ない事が要因と推察できます。

表3. 改修案A-1 (北海道帯広の事例):

残り10年間の発電量は約26%増加、うち既存FIT単価適用分はややマイナス、新単価適用分は約26%増となりました。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約221万円増、約6.3%の増加率となりました。

改修案A-2:

  • パネルを高出力モジュール(単結晶415ワット: 1722mm x 1134mm x 30mm)240枚に交換、架台も改造。
  • パネル出力の合計72,000ワットから99,600ワットに増加。
  • 初年度劣化率: 2.0%、経年劣化率: 0.55%。
  • 過積載可能なパワコン(4.95kW、変換効率97%、入力回路数4、MPPT回路数2)に交換。
  • FIT単価継続容量: 72,000 ÷ 99,600 = 72.29%
  • FIT単価変更容量: 27,600 ÷ 99,600 = 27.71%
  • 追加となるコスト: 単相4.95kWパワコン(10台)・関連機器・交換費用+単結晶415ワットモジュール(240枚)・交換費用+架台改造費+配線工事等。

表4. 改修案A-2 (全国平均):

シミュレーションで試算した結果、残り10年間の発電量は約40%増加となりました。
一方FIT単価・売電金額相当分は、既存FIT単価適用分は約1.6%増、新単価適用分が約39%増と増加分の殆どが新単価となりました。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約341万円増、約11.4%の増加率となりました。

改修案A-1、A-2より、パネル交換による発電量改善は大きな効果は見られました。売電収入の増加率を考慮すると、パネルの新規調達費用が発生する場合の費用対効果について、十分な検討が必要になってくると思われます。

改修案A-3:

  • 過積載可能なパワコン(4.95kW、変換効率97%、入力回路数4、MPPT回路数2)に置き換え、既設パネル・架台を活用しつつ、パネル(1720mm x 1134mm x 30mm)・架台も増設した場合。
  • 既設250wpパネル: 12直列 x 4入力 x PCS6台(250ワットx 288枚、72,000ワット)
  • 追加415wpパネル: 12直列 x 2入力 x PCS4台(415ワットx 96枚、39,840ワット)
  • パネル出力の合計72,000ワットから111,840ワットに増加。
  • 増設パネルの初年度劣化率: 2.0%、経年劣化率: 0.55%。
  • FIT単価継続容量: 72,000 ÷ 111,840 = 64.378%
  • FIT単価変更容量: 39,840 ÷ 111,840 = 35.622%
  • 追加となるコスト: 単相4.95kWパワコン(10台)・関連機器・交換費用+追加単結晶415ワットモジュール(96枚)+追加モジュール用架台(96枚分+配線・施工工事等。

表5. 改修案A-3 (全国平均):

シミュレーションで試算した結果、残り10年間の発電量は約45%増加となりました。
一方FIT単価・売電金額相当分は、既存FIT単価適用分は約6%の減少、新単価適用分が約51%と増加と、既存FIT単価部分の減少が顕著に見受けられます。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約200万円増、約6.7%の増加率となりました。

増設容量が増えるとパワコン定格容量によるピークカット容量も増えるため、既存FIT単価適用分が減少、場合によってはマイナスとなり、その影響が大きい事が分かります。
パネル・パワコンの故障や、影の影響によるマイナス要因を解消する事を主目的に発電所改修を行うのが良さそうな試算結果となりました。

今回のモデル発電所の発電シミュレーション、改修案A-1、A-2、A-3の日本各地49か所の試算結果(エクセルフォーマット)はこちらよりダウンロード可能です。

発電関連データのダウンロード
(Excelファイル)

次回は、三相低圧発電所のパネル交換・増設とパワコン交換の比較評価について試算・評価致します。

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