太陽光発電コラムPV column

コンサルティング

2023/01/11

発電所のパネル交換・増設とパワコン交換の比較評価(B. 三相低圧)

今回はモデル発電所(低圧、三相)を例に、パネル増設・リパワリングの比較評価をした結果をまとめました。FIT単価の価格変更式は、前回同様下記にて試算・評価しております。

<価格変更式>

B. モデル発電所 三相低圧:

(a) 太陽光モジュール: 多結晶285ワット、250枚、パネル出力の合計71,250ワット。初年度劣化率: 2.5%、経年劣化率: 0.7%。

(b) パワーコンディショナ: 三相9.9kW(入力回路数7、MPPT回路数1)、5台。変換効率: 93.0%、絶縁トランス内蔵。

(c) システム条件(PCS1台につき): 10直列 x 5回路入力、50枚、14,250ワット。DC/AC比率 143.94%。

(d) その他: 方位角南向き0°、架台傾斜角10度または30度、システム効率97%。

表1. 日本全国(49か所)の20年間の毎年の発電量推移:

備考: 弊社発電シミュレーション試算。日射データ(MONSOLA-11及びMETPV-11)及び各地の気温データを基に、パワコンのピークカット計算を1時間毎に評価して算出。

10年経過後のモデル発電所(B. 三相低圧)を11年目に改修・増設した場合について、3パターンにて試算・評価致しました。

改修案B-1:

  • 同サイズ(1640mm x 992mm x 35mm)の高出力モジュール単結晶315ワットに全数(250枚)交換した場合。
  • パネル出力の合計71,250ワットから78,750ワットに増加。
  • 初年度劣化率: 2.5%、経年劣化率: 0.7%。
  • パワーコンディショナ、システム構成、架台は変更せず。
  • FIT単価継続容量: 71,250 ÷ 78,750 = 90.48%
  • FIT単価変更容量: 7,500 ÷ 78,750 = 9.52%
  • 追加となるコスト: 単結晶315ワットモジュール x 250枚+モジュール交換費用

表2. 改修案B-1 (全国平均):

シミュレーションで試算した結果、残り10年間の発電量は約18%増加となりました。
一方FIT単価・売電金額相当分は、既存FIT単価適用分は約7%増、新単価適用分が約11%増となります。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約282万円増、約9.8%の増加率となりました。

モデル例の発電所の過積載比率が大きすぎない事(143.94%)、改修案のパネル容量の増加量(7,500ワット、10.53%)が大きくない事から、改修後も既存FIT価格分を毀損する事なく効果があがっています。しかしながら、追加コストの主要因である置換用太陽光モジュール単結晶315ワット(250枚)のコストに対する費用対効果に難がある事が推測されます。

改修案B-2:

  • パネルを高出力モジュール(単結晶425ワット: 1762mm x 1134mm x 30mm)250枚に交換、架台も改造。
  • パネル出力の合計71,250ワットから106,250ワットに増加。
  • 初年度劣化率: 2.0%、経年劣化率: 0.55%。
  • パワコン(9.9kW、変換効率93.7%、入力回路数5、MPPT回路数5、絶縁トランス内蔵)に交換。
  • FIT単価継続容量: 71,250 ÷ 106,250 = 67.06%
  • FIT単価変更容量: 35,000 ÷ 106,250 = 32.94%
  • 追加となるコスト: 三相9.9kWパワコン(5台)・関連機器・交換費用+単結晶425ワットモジュール(250枚)・交換費用+架台改造費+配線工事等。

表3. 改修案B-2 (全国平均):

シミュレーションで試算した結果、残り10年間の発電量は約48.7%増加となりました。
一方FIT単価・売電金額相当分は、既存FIT単価適用分は約0.3%減となり、新単価適用分が約49%増となりました。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約343万円増、約11.9%の増加率となりました。

前述の改修案B-1とB-2の比較(下記)の通り、増設容量が大きくなると発電量UPは見込めるものの、増設FIT単価の割合が増える事で、売電収入増につながりにくくなる事がわかります。

表4. モデル発電所、改修案B-1、B-2の比較:

改修案B-3:

  • パワコン(9.9kW、変換効率93.7%、入力回路数5、MPPT回路数5、絶縁トランス内蔵)に置き換え、既設パネル・架台を活用しつつ、パネル(1720mm x 1134mm x 30mm)・架台も増設した場合。
  • 既設285wpパネル: 12直列 x 5入力 x PCS4台(285ワットx 240枚、68,400ワット)
  • 追加415wpパネル: 12直列 x 5入力 x PCS1台(415ワットx 60枚、24,900ワット)
  • パネル出力の合計71,250ワットから93,300ワットに増加。
  • 増設パネルの初年度劣化率: 2.0%、経年劣化率: 0.55%。
  • FIT単価継続容量: 71,250 ÷ 93,300 = 76.37%
  • FIT単価変更容量: 22,050 ÷ 93,300 = 23.63%
  • 追加となるコスト: 三相9.9kWパワコン(5台)・関連機器・交換費用+追加単結晶415ワットモジュール(60枚)+追加モジュール用架台(60枚分+配線・施工工事等。

表5. 改修案B-3 (全国平均):

シミュレーションで試算した結果、残り10年間の発電量は約28%増加となりました。
一方FIT単価・売電金額相当分は、既存FIT単価適用分は約2.3%の減少、新単価適用分が約30%と増加と、既存FIT単価部分の減少が顕著に見受けられます。FIT単価が40円/kWh、新単価が10円/kWhの場合、

となり、売電収入は約151万円増、約5.3%の増加率となりました。

既存パネル・架台を活用しつつパネルを増設する事で改修の費用対効果向上を目指しましたが、増設したパネル(415ワットパネルx60枚、24,900ワット)とパワコン容量(9,900ワット)の過積載率が大きすぎたために、ピークカット量が多くなり、既存FIT単価適用分の減少の影響が大きくなってしまいました。

改修案B-3をベースにパネル枚数変更による比較

全国平均値に近い値として、栃木県宇都宮市を例に増設部分のパネル容量を60枚(改修案B-3)、50枚(B-3-a)、40枚(B-3-b)の比較をしました。

  • パワコン(9.9kW、変換効率93.7%、入力回路数5、MPPT回路数5、絶縁トランス内蔵)に置き換え、既設パネル・架台を活用しつつ、パネル(1720mm x 1134mm x 30mm)・架台も増設した場合。
  • PCS4台の部分は改修案B-3のまま変更せず。
    既設285wpパネル: 12直列 x 5入力 x PCS4台(285ワットx 240枚、68,400ワット)
  • 残りのPCS1台の部分のパネル容量を3通りで比較。
    B-3. 追加415wpパネル: 12直列 x 5入力 x PCS1台
    B-3-a. 追加415wpパネル: 10直列 x 5入力 x PCS1台
    B-3-b. 追加415wpパネル: 8直列 x 5入力 x PCS1台

表6. 改修案B-3をベースに比較(栃木県宇都宮市の場合):

パネル枚数を減らす事で発電量自身は若干減るものの、既存FIT単価適用分が多くなる事が分かります。

表7. 改修案B-3、B-3-a、B-3-bの比較結果(栃木県宇都宮市の場合):

パネル容量が89,150ワット、85,000ワットの時の方が、パネル容量93,300ワットの時よりも売電収入が多くなるという逆転現象がみられました。「発電所の既存のモジュール容量と増設容量の割合」、「各PCSとパネルの過積載の割合」を比較する事で、増設に対する費用対効果を比較検討する事が可能である事が分かります。

今回のモデル発電所の発電シミュレーション、改修案B-1、B-2、B-3の日本各地49か所の試算結果(エクセルフォーマット)はこちらよりダウンロード可能です。

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