太陽光発電コラムPV column

ソーラー

2022/08/11

米国国立再生可能エネルギー研究所(NREL)による米国太陽光発電システム及びエネルギー貯蔵コストのベンチマーク

米国の国立再生可能エネルギー研究所 (National Renewable Energy Laboratory: 通称NREL)では、毎年多くの科学技術資料や特許を取得しております。今回のコラムでは、2021年11月に発表されました「米国太陽光発電システム及びエネルギー貯蔵コストのベンチマーク(全76ぺージ)」の概要が記載されているエグゼクティブサマリーをご紹介致します。

出典元: U.S. Solar Photovoltaic System and Energy Storage Cost Benchmarks: Q1 2021

(適用為替レート、日本語版のみ)
原文の米ドル金額は、2022年8月の平均為替レートである1米ドル=135.0円を用いて日本円に換算した金額を併記しています。

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エグゼクティブサマリー

本レポートでは、2021年第1四半期時点の米国の太陽光発電(PV)システムの設置コストをベンチマークしています。ボトムアップ方式を採用し、設置時に発生するすべてのシステムおよびプロジェクト開発コストを計上して、住宅用、商業用、公共事業用PVシステムのコストを、エネルギー貯蔵システムの有無にかかわらずモデル化しております。設置コストの観点から、典型的な設置技術やビジネスオペレーションのモデル化を試みています。コストは開発者/設置者の視点で表記されています。したがって、すべてのハードウェアコストは、開発者/設置者が機器を購入する際の価格であり、既存の供給契約やその他の契約は考慮されていません。そのため、ハードウェアのコストに利益を含めています。*1 そのため、設置業者/開発業者が受け取る利益は、設置業者/開発業者に支払われる最終小売価格に近づけるため、他のすべてのコストに加え、別のコストカテゴリーとして報告しています。また、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響がないビジネス環境を想定しています。最後に、ベンチマークは全州の平均値を用いて算出した全米平均になります。表ES-1は、一次ベンチマークの前提条件をまとめたものです。

表 ES-1. ベンチマークの前提条件

a. ドル/ワットの総コスト値は、モジュールやインバータの価格などのモデル入力が有効数字2桁を使用するため、有効数字2桁でベンチマークされます。

ボトムアップ・モデリングに基づき、2021年第1四半期のPVと蓄電のコストベンチマークは表ES-2に示す通りです:

表 ES-2. 2021年第1四半期PV及びエネルギー貯蔵コストベンチマーク

a. PV+蓄電システムのコスト/ワットDC(WDC)は、ハイブリッドシステム(蓄電システム)の設置に必要な追加コストを、PVシステムの単独設置から反映させるために、PV容量を用いて試算しています。コストレンジは直流連系と交流連系のコスト差を示しています。
b. 本レポートで言及されている蓄電池容量の定格はすべて DC になります。

なお、これらすべてのシステムの相互接続容量は、システムの総交流容量と等しいと仮定しています。本報告書の報告結果に関連するデータはすべてNRELデータカタログに掲載されています。*2 図ES-1(ページvi)は2021年第1四半期のPVのみによるベンチマーク結果と2020年第1四半期のNational Renewable Energy Laboratoryによるベンチマーク分析結果を比較したものになります。*3

図ES-1. 2020年第1四半期と2021年第1四半期のPVコストベンチマークの比較

BOSはbalance of system/架台・工事等、PIIはpermiting/許認可, inspection/検査, and interconnection/系統連系の略称になります。

2020年から2021年にかけて、住宅用、商業用屋根上、発電事業用(一軸追尾式架台)のPVシステムコストのベンチマークでそれぞれ3.3%(0.09ドル≒12.15円/W)、10.7%(0.19ドル≒25.65円/W)、12.3%(0.13ドル≒17.55円/W)の削減(2020年米ドル基準)となりました。BOS(バランス・オブ・システム)コストは、一般的にBOSコストの減少を報告してきた過去のベンチマークレポートとは異なり、前年同期比で、すべてのセクターで増加または横ばいとなりました。BOSコストの増加は、モジュールコストの19%削減(2020年米ドル換算)で相殺されています。3つのセクター(住宅用、商業用屋根上設置タイプ、発電事業用一軸追尾式タイプ)のモデルPV設置コストは全体として、2020年第1四半期のシステムコストと比較して低下しています。表ES-3は、3つのセクターのベンチマーク値と、コストの減少および増加の要因を示しています。

表 ES-3. 2020年第1四半期と2021年第1四半期のPVシステムコストベンチマークの比較

図 ES-2 は、2021年第1四半期と 2020年第1四半期のベンチマーク値の差を比較のために調整したものになります。ドルの基準を2019年から2020年に変更したことに加え、年度間のコスト変動をより明確に示すために、2020年第1四半期の値を現在の2021年第1四半期のサイズと同じサイズのストレージ容量に調整しました。

図ES-2. 2020年第1四半期と2021年第1四半期の独立型蓄電池電力貯蔵システムコストベンチマークの比較

これまでのベンチマークレポートでは、すべての太陽光分野において、蓄電システムコストは銘板容量で表されていたが、今年は家庭用蓄電システムコストのみ銘板容量で表し、商業規模およびは発電事業規模の蓄電システムコストは使用可能容量で表しています。2020年第1四半期の商業用および発電事業用システムの「モデル更新による追加コスト」は、同じ値(600kW/240kWh、60MW/240MWh)を維持するために蓄電容量を追加したことによるコストの増加を示していますが、銘板容量ではなく使用可能容量で引用しています。往復効率(RTE)の低下や充電状態(SOC)の制限を考慮して、DC側の電池容量をオーバービルドする必要があります。また、2020年第1四半期の家庭用蓄電容量は、これまでベンチマークしていた5kW/20kWhと3kW/6kWhから、2021年第1四半期のベンチマークである5kW/12.5kWhに調整されました。

図ES-3は、2020年から2021年にかけての住宅用太陽光発電+蓄電池のベンチマークを、DCカップリング(直流連系)とACカップリング(交流連系)のケースでそれぞれ約6%と3%削減することを示しています。

図. DCカップリングとACカップリングの構成例

これらの削減のほとんどは、太陽電池モジュールとバッテリーパックのコストダウンに起因しています。2020年から2021年にかけて、太陽光モジュール22枚のシステムの定格容量が7.0kWから7.15kWに増加したにもかかわらず、コスト削減を実現しました。

図ES-3. 2020年第1四半期および2021年第1四半期の住宅用太陽光発電+蓄電池システムコストベンチマークの比較

2020年第1四半期の家庭用蓄電容量は、これまでベンチマークしていた5kW/20kWhと3kW/6kWhから、2021年第1四半期のベンチマークである5kW/12.5kWhに調整しました。最大電力点追従型充電制御装置のコストはBOSカテゴリに含まれます。

図ES-4は2020年から2021年にかけての商用 PV+蓄電池のベンチマークをDCカップリングとACカップリングのケースでそれぞれ9.3%と9.5%削減したものになります。図 ES-5は、2020年から2021年にかけての電力事業用太陽光発電+蓄電池のベンチマークを、直流連系と交流連系でそれぞれ11.6%と12.3%の削減を示したものになります。2021年のDC-DCコンバータのコスト上昇により、DCカップリングシステムはACカップリングよりコスト高になります。

図ES-4. 2020年第1四半期および2021年第1四半期の商業用PV+蓄電システムの比較 コストベンチマーク

2021年第1四半期以前の商用ストレージシステムのコストは、銘板容量で表しています。2020年第1四半期の商用システムにおける「モデル更新による追加コスト」は、同じ値(600kW/240kWh)を維持しつつ、銘板容量ではなく使用可能容量で見積もり、オーバービルド係数1.3で蓄電容量を追加したことによるコスト増を表しています。RTEロス(10%)と充電状態の制限(20%)を考慮し、DC側の電池容量をオーバービルドする必要があります。RTEロス(10%)と充電状態の制限(20%)を考慮し、DC側の電池容量をオーバービルドする必要があります。システム制御と通信、DC-DCコンバータのコストはBOSコストカテゴリーに含まれます。これらの変更とその他のモデル更新を考慮すると、ストレージシステムのキットコストは2020年から2021年にかけて実際に減少しています。付録A(英語版)は、昨年のバージョン(Feldman et al. 2021)と今年のバージョンの間でモデルに加えられた変更の詳細な議論を提供するものになります。

図ES-5. 2020年第1四半期と2021年第1四半期の発電事業規模PV+蓄電システムコストベンチマークの比較

2021年第1四半期以前の発電事業規模の蓄電システムコストは、銘板容量で表しました。2020年第1四半期の発電事業システムの「モデル更新による追加コスト」は、同じ値(60MW/240MWh)を維持するために蓄電容量を追加することによるコスト増加を示していますが、銘板容量ではなく使用可能容量で見積もり、オーバービルド係数を1.3としました。RTEロス(10%)と充電状態の制限(20%)を考慮し、DC側の電池容量をオーバービルドする必要があります。システム制御と通信、DC-DCコンバータのコストはBOSコストカテゴリーに含まれます。これらの変更とその他のモデル更新を考慮すると、ストレージシステムのキットコストは2020年から2021年にかけて実際に減少しています。付録A(英語版)は、昨年のバージョン(Feldman et al. 2021)と今年のバージョンの間でモデルに加えられた変更の詳細な議論を提供するものになります。

導入コストの変化は、運用、システム設計、技術の変化とともに、平準化エネルギーコスト(LCOE)に変化をもたらしています(図ES-6)。2020年から2021年にかけて、住宅用太陽光発電+蓄電池システムのLCOEは13%低下し*4、住宅用スタンドアロン太陽光発電システムのLCOEは9%低下しました。商業規模および発電事業規模の太陽光発電+蓄電システムの平準化電気料金はそれぞれ7%と13%低下しています。同時に、商業規模および発電事業規模の太陽光発電システムのLCOEは、それぞれ9%と12%低下しました。

図 ES-6. 平準化エネルギーコスト(LCOE) 2020-2021年

我々の住宅用太陽光発電+蓄電池システムモデルの現行バージョンではバッテリーサイズを5kW/12.5kWhと想定していますが、2020年第1四半期のベンチマークではバッテリーサイズを3kW(6kWh)としています(Feldman et al.2021)。過去のコストトレンドとコストモデルの変更をより明確に区別するため、バッテリーサイズを5kWh(12.5kWh)として2020年第1四半期の住宅用太陽光発電+蓄電システムも計算しています。モデル更新による追加費用の項目は、各モデルの結果の差(3kW/6kWhシステム:20.1セント≒27.135円/kWh、5kW/12.5kWhシステム:21.5セント≒29.025円/kWh)を表しています。LCOEとLCOSS(太陽光発電+蓄電systemの平準化コスト)は、各シナリオの容量係数を変えて計算していますが、それ以外の値は同じです。2021年のベンチマークで太陽の日射量の多い場所と少ない場所に使われているのは、カリフォルニア州ダゲットとワシントン州シアトルになります。2020年のベンチマークでは、アリゾナ州フェニックス(High)とニューヨーク州ニューヨーク(Low)という、より緩やかな場所が使われたため、結果の幅が広がっていることが説明できます。付録A(英語版)は、昨年のバージョン(Feldman et al. 2021)と今年のバージョンの間でモデルに加えられた変更の詳細な議論を提供するものになります。
  1. 利益とは、「コスト」(開発会社や設置会社がシステムを構築するために発生する費用の総額)と「価格」(エンドユーザーがシステムを購入するために支払う金額)の違いの一つになります。
  2. “データファイル(米国太陽光発電BESSシステムコストベンチマーク2020年第1四半期報告書)NREL” https://data.nrel.gov/submissions/158.
  3. 付録B(英語版)は、過去のすべてのNRELベンチマーク分析(2010~2021年)のベンチマーク結果をまとめたものになります
  4. 2021年住宅用太陽光発電+蓄電システムのLCOE(LCOSS)の報告値は、2020年のベンチマーク報告(3kW/12.5kWh)よりも大型のバッテリーシステム(5kW/12.5kWh)をモデル化しているため、2020年の値より17%高くなっています。2020年の太陽光発電+蓄電システムモデルのLCOEを仮定すると、2020年の値は20.1セント≒27.135円/kWhから21.5セント≒29.025円/kWhに上昇します。

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こちらのレポート全文(全76ページ)には各モデルの詳細データ・分析レポートが記載されておりますので、是非ご参照下さい。

出典元: NREL https://www.nrel.gov/docs/fy22osti/80694.pdf

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