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エネルギー

2022/04/01

太陽光発電によるEU のエネルギー自立に向けた8つの行動 新報告書

この報告書はヨーロッパの太陽光発電業界団体のSolarPower Europe が2022年3月31日に発表致しました。詳細や報告書ダウンロードにつきましては、SolarPower Europeのウェブサイトを御参照下さい。

3月31日、ブリュッセルで開催されたSolarPower Summitに国際的な太陽光コミュニティが集まりました。ロシアのウクライナに対するいわれのない戦争を踏まえて、サミットでは、太陽光発電による EU のエネルギー自立に必要な、現実的な野心に関する画期的な報告書を発表しました。

欧州の太陽光発電関連企業のCEOが円卓会議にてカドリ・シムソン EU エネルギー担当委員に提出した「EU のエネルギー自立のための太陽光発電の野心的な導入」は、来たるEUソーラー戦略の協議に対するSolarPower Europeの公式回答として機能しています。この報告書は、短期、中期、⾧期において、EUの気候目標とエネルギー安全保障のために太陽光発電が提供できるもの (そして、そのために必要なもの) を正確に示しています。

短期的には、ロシア産ガスからの即時撤退を支援し、屋根上設置太陽光の分野で適切な枠組みがあれば、今冬のEUのエネルギー容量を39GW*追加で提供することが可能です。これは、23.3GWの屋根上太陽光発電設備と、15.7GWの大規模太陽光発電設備に相当します。SolarPower Europeは現在、迅速に追加建設できる大規模太陽光発電設備の部門/領域について調査をしております。

(EU27 Total Solar PV Market Scenarios 2022-2030)

現実的な太陽光発電の導入促進は、中期的に起こりえます。現在のREPowerEUによる太陽光発電市場 2030年予測は525GWであり、戦前に業界で最も可能性があった通常シナリオ予測値である672GWを下回っています。ロシアのウクライナ戦争や、ますます深刻化する気候危機を背景に、本報告書では2030年までにEU全体の太陽光発電容量を1TW以上見込む積極的なシナリオを提示し、欧州太陽光テラワット時代に必要な基盤を構築するための8つのアクションを述べております:

  • プロジェクト展開の促進
  • 太陽光発電プロジェクトの系統へ連系と統合
  • 太陽光発電プロジェクトの展開に必要なスキルと人材の育成
  • 太陽光発電と一体化された用途への展開
  • サプライチェーンと原材料へのアクセスの確保
  • 国内製造業への再投資
  • リノベーション時における、屋根上太陽光発電の導入促進
  • 消費者主導の太陽光発電を可能にする枠組みの開発

太陽光発電テラワット時代に備える8つのアクション:

  1. プロジェクト展開の促進
    短期的には、すでに計画中の既存プロジェクトを2022年末までに完了するよう促進させ、ソーラー・ストレージ・プロジェクトの追加に適した地域を特定し、2025年から年間100GWの太陽光発電を展開するというEUレベルの明確な目標を設定することが可能です。

    中期的には、太陽光発電の利点に関する科学的根拠と市民の意識を高め、生物多様性のベストプラクティスを地域関係者と共有し、エネルギー・環境・農業当局間の構造的対話を開始し、JRC (Joint Research Centre) を通じて太陽光発電所に利用できる土地の地図を作成する必要があります。
  2. 太陽光発電プロジェクトの系統へ連系と統合
    短期的には、2022-24年の間、系統連系コストを停止し、系統に優しい太陽光プロジェクト (太陽光と蓄電設備や再生可能エネルギー設備とのハイブリッド型) の枠組みを開発し、そのようなプロジェクトに対する専用の支援プログラムを立ち上げることができます。

    中期的には、許認可に要する期間を短縮し、TSO (送電管理運用者) とDSO (配電管理運用者) による系統構成に関するデータ公開の義務を強化し、配電レベルを含んだ系統の近代化と柔軟な系統運用の発展に関するEUレベルのロードマップが策定可能です。
  3. 太陽光発電プロジェクトの展開に必要なスキルと人材の育成
    短期的には、すべての屋根にソーラーパネルを設置することを義務付け、ガスや石油のボイラーの新規設置を禁止することで、電気・機械設備業界に明確なシグナルを送ることができます。

    中期的には、コミュニケーションキャンペーンや当局、産業界、教育者間の組織的協力を含んだ「欧州技能アジェンダ」に見られるように、太陽光発電産業のエコシステムのための「技能イニシアチブ」を立ち上げる事が出来ます。効果的な「技能イニシアチブ」には、研修プログラムへの資金提供、各国の徒弟制度に太陽光発電を含めること、熟練労働者の移動に対してはEU近隣諸国に限定した協力が含まれます。
  4. 太陽光発電と一体化された用途への展開
    アグリソーラー (営農型太陽光) 、水上 (浮体式) 太陽光発電、建材一体型太陽光発電など

    中期的には、革新的な太陽光発電の導入に関する象徴的なイニシアチブを立ち上げ、水上太陽光発電や営農型太陽光の利点に関する実績や事故のデータベースを収集し、O&Mソリューションを特定し、OPEXコストのモデルを作成し、供給能力への影響を定義することが可能です。また、NEW European Bauhausイニシアチブに基づき、ソーラー産業計画の一環としてBIPV (建材一体型太陽光) 計画を立ち上げることも可能です。
  5. サプライチェーンと原材料へのアクセスの確保
    中期的には、欧州原材料業界による事前調査を基に、太陽光発電産業で必要とされる原材料の包括的な分析を展開し、業界の関与を確保する必要があります。この架台は、特に金属ケイ素、銀、アルミニウム、銅に焦点を絞る必要があります。
  6. 国内製造業への再投資
    短期的には、チップスファンドのように、10億ユーロのソーラーファンドを立ち上げ、民間投資を喚起する必要があります。また6ヶ月以内にすぐに着工できるプロジェクトに対する融資を完了させる目標を設定し、太陽光関連製品間で公平な競争条件を作り出すために持続可能な基準を定義・実施し、必要な部品や原材料の入手を容易にするためにEUの貿易障壁を撤廃する必要があります。
  7. リノベーション時における、屋根上太陽光発電の導入促進
    短期的には、2022年末までに23.3GWの屋根上太陽光発電への投資を前倒しで行うEU Solar Rooftopイニシアチブを立ち上げ、加盟国がリフォームや太陽光発電導入に対して短期的かつ野心的な公的支援を行う補助金承認手続きを緩和する機会があります。

    中期的には、EPBDとREDIIの改正とその後の実施を通じ、リフォームと屋根上太陽光発電に関する大規模な啓蒙キャンペーンと、適切な規制の枠組みを展開することができると思われます。
  8. 生産消費者(自家消費)に適合する、消費者主導太陽光発電の可能な枠組みの開発
    短期的には、屋根上太陽光発電の導入にあたり、生産消費者対応または電力の柔軟な対応を可能とするためには、エネルギー管理システムと蓄電池の設置が必要です。

    中期的には、生産消費者向けフレームワーク開発の最適事例をみつけ、そうした実例を共有するためのフォーラムを設立し、消費者向け太陽光発電ソリューション開発のためのアクションプランを定義し、NECPsの改訂を活用して欧州政府から各国の生産消費者戦略として義務付けることが考えられます。

Source: SolarPower Europe

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