太陽光発電コラムPV column

エネルギー

2026/05/01

EU域内の再生可能エネルギーが化石燃料ショックからヨーロッパを守る方法 (SolarPower Europe)

中東危機を切っ掛けに化石燃料に関する注目が高まり、その結果日本国内のエネルギー価格も注目されるように思われます。同様に世界各国でもエネルギーに関して見直している状況のため、再生可能エネルギーや蓄電設備をはじめとするエネルギー貯蔵システムの評価に関する記事を見る事が出来ます。

今回のコラムでは、再生可能エネルギーと蓄電設備のビジネスモデルの先進地域であるヨーロッパの実例として、2026年4月1日にSolarPower Europeが発表しました「EUのエネルギー安全保障のための太陽光発電と蓄電。原題: Solar and storage for EU energy security」についてご紹介致します。

出典元: https://www.solarpowereurope.org/insights/thematic-reports/solar-and-storage-for-eu-energy-security

注: コラムの日本語版はオリジナルのユーロ表記に加えて、弊社にて日本円での参考金額を追記しております。為替レート: 1欧州ユーロ=187.00円で換算表記しております。

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EUのエネルギー安全保障のための太陽光発電と蓄電システム
ブリーフィングペーパー
2026年4月1日

域内再生可能エネルギーが化石燃料ショックからヨーロッパを守る方法

地政学的緊張の高まりと世界の化石燃料市場の変動性が高まる中、EUのエネルギー安全保障は外部からの供給途絶や価格高騰の影響を受けやすい状況にあります。したがって、輸入燃料に依存しない国内発電の加速は戦略的に不可欠です。

本稿では、太陽光発電(PV)を蓄電システムやその他の柔軟性のあるソリューションと組み合わせることで、エネルギー価格の変動を抑制し、輸入依存度を低減することにより、EU市民や企業にとって強力な緩衝材となり得ることを示しています。分析によると、EUにおける太陽光発電は既に化石燃料輸入の大幅な削減を実現し、消費者を極端な価格変動から守っています。EU全域で太陽光発電と蓄電設備の導入をさらに進めれば、将来的に化石燃料輸入コストを大幅に削減できるでしょう。

主な調査結果

  • 太陽光発電は、地政学的な混乱期において、すでにEUの化石燃料輸入コストを数十億ユーロ削減しています。
  • ガス価格の動向にもよりますが、2026年だけでも、EUにおける太陽光発電は数百億ユーロ相当のガス輸入を削減できると見込まれています。
  • 太陽光発電の導入を加速すれば、さらなるコスト削減が実現し、欧州が供給ショックにさらされる影響をさらに軽減できるでしょう。
  • 蓄電システムおよび柔軟性をもったソリューションは、供給量のシフト、ピーク時の電力需要の抑制、ガス価格の電力市場に与える影響を限定的にさせる事を通じて、太陽光発電の価値を最大化する上で重要な役割を果たします。
  • 輸送と暖房の電化は、再生可能エネルギーの利用が拡大するにつれて、石油とガスの輸入量の構造的な削減をさらに促進しています。
  • 企業は、太陽光発電の電力購入契約(PPA)、自社敷地内太陽光発電、および蓄電システムを活用することで、エネルギーコストとリスクへの露出を大幅に削減できます。

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導入

中東における戦争の激化が進む中、輸入化石燃料に依存しない域内発電の加速が、EUの経済的強靭性とエネルギー安全保障を確保する上で不可欠であることは明らかです。再生可能エネルギー、特に蓄電機能を備えた太陽光発電は、緩衝材として機能し、EU市民と産業界を、そうでなければさらに深刻化していたであろうエネルギー価格の高騰や輸入コストの急騰から守ることができます。

EUのガス価格は2026年3月初旬に50ユーロ/MWh(9,350円/MWh)の大台を突破し、昨年比で50%上昇、前月比ではほぼ倍増しました。原油価格も27%上昇しています。ユーロ換算すると、10日間の戦争でEUの納税者は化石燃料輸入に30億ユーロ(5,610億円)の追加費用を負担したことになります。1 3月16日のフォン・デア・ライエン欧州委員長のEU理事会宛書簡によりますと、16日後には追加費用は60億ユーロ(1.122兆円)に達しました。2

太陽光発電量が最大となる日中は電気料金が最も安いものの、電力需要が高く風力発電と太陽光発電量が少ない早朝と夕方には、石炭火力発電所とガス火力発電所がその不足分を補わなければなりません。このため、加盟国は燃料価格の変動に脆弱になり、ガス価格の高騰によりピーク時の電力料金は非常に高額になっています。ENTSO-Eのデータによると、今月初め、ドイツの卸売電力価格は夕方に約250ユーロ/MWh(46,750円/MWh)まで上昇し、日中の価格の5倍以上となりました。3

こうした背景を踏まえると、太陽光発電と蓄電システムは、緊急事態に対して強力かつ迅速な救済策となり得ます。太陽光発電と蓄電システムは、地域で安価な電力を生産し、日照時間外にも供給を可能にすることで、メリットオーダー方式においてガスが電力価格を決定する時間を短縮し、価格変動を抑制します。さらに、EUにおける太陽光発電は、第三国からの化石燃料輸入の必要性を減らし、近年経験されているような深刻な混乱に陥りやすいサプライチェーンへの依存度を低減します。

次のセクションでは、太陽光発電と柔軟性が、EUが化石燃料の輸入への依存度を減らし、エネルギー価格の変動からEUを守る上でどのように役立つかを概説します。

1. 委員長演説:欧州議会本会議での討論。
2. 2026年3月16日付のフォン・デア・ライエン欧州委員長のEUCO宛ての書簡。
3. ENTSO-E 透明性プラットフォーム。

太陽光発電と蓄電システムは、EUを化石燃料価格の変動からどのように守ることができるのか?

1. 中東戦争開始以来、太陽光発電によって化石燃料の輸入コストはどれだけ削減されたか?

3月前半の開戦後最初の2週間半で、EUに設置された太陽光発電設備は約19.9テラワット時の電力を発電しました。もしEUに太陽光発電設備がなかったとしたら、この電力は他の既存技術で発電しなければならなかったでしょう。仮にこの需要をガス火力発電で賄う必要があったとすると、19億ユーロ(3,553億円)の費用がかかったと推定されます。

2026年3月16日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、戦争開始以来、EUは化石燃料の輸入にすでに60億ユーロ(1.112兆円)を追加で支出したと述べました。もしEUに太陽光発電がなければ、79億ユーロ(1.477兆円)、つまり32%も高い金額を支払うことになっていたでしょう。

最新の数値は、当社のデイリートラッカーでご確認ください。

太陽光発電がなければ、戦争開始以来のEUの化石燃料輸入額は32%増加していたでしょう。

図1. EUにおける化石燃料の追加輸入コストおよび太陽光発電を除いた輸入コスト(2026年3月1日~17日)

2. 太陽光発電によって、2026年全体でどれくらいの費用が節約できるか?

2026年には、EUの太陽光発電設備は415テラワット時(TWh)程度の電力を発電すると予想されています。これをガスで発電しなければならないと仮定すると、2026年3月中旬時点のガス価格予測に基づくと、輸入コストは346億ユーロ(6.47兆円)になります。紛争の長期化とサプライチェーンの混乱の深刻化によりガス価格がさらに高騰した場合、輸入総額は675億ユーロ(12.622兆円)にまで上昇するでしょう。

EUにおける太陽光発電は、今後のガス価格の動向次第で、2026年には化石燃料の輸入額を350億~680億ユーロ(6.545兆~12.716兆円)削減する見込みです。

図2. 2026年にEUの太陽光発電をガス火力発電に置き換える場合の輸入コスト

3.ガス価格の上昇が消費者に与える影響を軽減する上で、貯蔵と柔軟性はどのような役割を果たすのか?

柔軟性は、ガス価格の変動が電力価格に与える影響を軽減する上で重要な役割を果たします。安価な太陽光発電の利用を最大化し、電力供給を最も必要とされる時間帯にシフトさせ、消費ピークを抑制することで、柔軟性を高めるソリューションは、メリットオーダー制度の下でガスが電力価格を決定する時間を短縮します。

Aurora Energy Researchの分析では、特に、蓄電池、揚水発電、水力発電設備がスペインと英国の電力システムに必要な柔軟性を提供し、化石燃料価格の上昇による影響を最小限に抑えたことが強調されています4。一方、ガスへの依存度が高いオランダとドイツでは、翌日の市場価格がスペインや英国の2倍の水準まで上昇しました。

4. オーロラ・エナジー・リサーチ・リミテッド(2026):ボラティリティの価値:
イラン紛争が欧州の電力市場に与える影響。

4. 今年の太陽光発電の導入が予想よりも速いペースで進んだ場合、2026年に化石燃料の輸入量がどれだけ削減されるか?

2026年3月中旬時点のガス価格動向予測に基づくと、EUは、太陽光発電設備の設置が政策支援不足による太陽光発電市場の若干の縮小を想定する現在の軌道(61GW)ではなく、SolarPower Europeのハイシナリオ(70GW)に沿って進めば、2026年に化石燃料の輸入額をさらに7億1900万ユーロ(1345億円)削減できることになります。この追加的な設備容量は、より多くの太陽光発電を生み出し、輸入量をさらに削減するでしょう。

紛争が激化し、ガス価格が2026年後半にかけて平均89ユーロ/MWhま(16643円/MWh)でさらに高騰した場合、太陽光発電の導入加速により、回避できる化石燃料輸入額は2026年には最大12億ユーロ(2244億円)に達するでしょう。

2026年までに太陽光発電設備の導入が増加すれば、基準シナリオと比較して最大12億ユーロ(2244億円)のガス輸入削減につながるでしょう。

図3. 発電導入が中シナリオではなく高シナリオに達した場合の、化石燃料輸入コストの追加削減額

5. 太陽光発電によって、2030年までに化石燃料の輸入はどれだけ削減されるか?

3月中旬のガス価格予測と太陽光発電の導入ペースに基づくと、2026年から2030年の間に太陽光発電によって発電された電力は、ガスを代わりに発電に使用した場合のガス輸入コスト1,700億ユーロ(31.79兆円)を削減できることになります。これは年間平均340億ユーロ(6.358兆円)の節約に相当し、これは34ギガワット(GW)の設置に必要な費用とほぼ同額であり、今年の年間太陽光発電設備設置量の半分以上を占めます。

EUにおける太陽光発電は、2026年から2030年の間に1700億ユーロ(31.79兆円)相当のガス輸入を削減する見込みです。

図4. 太陽光発電によるEUの年間および累積ガス輸入削減量(2026年~2030年)

6. 中東戦争の開始以来、輸送と暖房の電化によって、化石燃料の輸入コストはどれだけ削減されたか?

再生可能エネルギー由来の電力で稼働するバッテリー式電気自動車が約800万台に上り、道路輸送の電化によって2025年には約20億ユーロ(3740億円)の石油輸入コストが削減され、2026年1月から4月までの期間だけでも11億ユーロ(2057億円)の削減が見込まれています。同様に、ヒートポンプによる暖房の電化によって2025年には約200億ユーロ(3.74兆円)が削減され、2026年1月から4月までの期間だけでも53億ユーロ(9911億円)の削減が見込まれています。

熱と輸送の電化のおかげで、2026年だけでも既に60億ユーロ(1.122兆円)以上が節約されています。

EUにおける輸送と暖房の電化により、2025年には化石燃料の輸入回避で100億ユーロ(1.87兆円、2026年1月から4月だけでも60億ユーロ(1.122兆円)以上が節約されました。

図5. 電気自動車とヒートポンプのおかげで回避されたEUの化石燃料輸入額

太陽光発電と蓄電システムは、エネルギー危機においてEU企業をどのように支援できるか?

卸売電力価格の変動が企業にどの程度直接的な影響を与えるかは、電力市場への統合度合いと、先物市場でヘッジ手段を利用できる能力によって決まります。電力消費量の多い企業は、スポット市場で直接電力を購入し、長期的な市場時間枠で適切なヘッジ商品を見つけられない場合、卸売価格の影響をより直接的に受けることになります。

しかし、ほとんどの小規模企業は小売電力料金を支払う傾向にあります。小売電力料金は契約に基づいており、調整に遅れがあり、部分的にヘッジされているため、現在の紛争が電気料金の値上げに及ぼす直接的な影響は依然として不確実です。企業の規模が小さいほど、直接的な影響は小さくなり、エネルギー料金への時間差の影響は大きくなります。さらに、今後数か月で小売価格が上昇するか、現在の水準で停滞し、2022年のエネルギー危機のピーク以来の下落傾向が止まるのか、あるいは2022年の危機レベルに戻るのかは判断が難しい状況にあります。これは主に、ホルムズ経由のLNG供給の中断が2026年第2四半期まで続くかどうか、そして紛争がさらにエスカレートしてガスインフラにさらなる損害が生じるかどうかにかかっています。

ドイツの例では、2026年1月の中小規模の工業企業向け新規契約の平均電力価格は1kWhあたり16.0ユーロセント(29.92円)で、前年より1.6ユーロセント(2.99円)/kWh下落(送電網料金の補助金と調達コストの減少による)し、2022年のエネルギー危機のピーク時の価格(43.3ユーロセント/kWh、80.97円/kWh)5 より63%低い価格となっています。紛争の激化とサプライチェーンの混乱を考慮すると、今後数週間から数か月でこれがどれだけ上昇するかはまだ分かりません。

EU企業向けの太陽光発電と柔軟性

企業が太陽光発電から電力を調達する方法は主に2つあります。

  1. 大規模なエネルギー消費者は、PPA契約を締結することで、電力消費量の一部を固定価格で電力網内の太陽光発電から調達することができます。
  2. 小規模なエネルギー消費者は、自身の太陽光発電設備(および蓄電設備)から太陽光発電による電力を生成し、消費することができます。

どちらの場合も、太陽光発電と蓄電システムは既に企業のエネルギーコスト削減に貢献しています。今日では、太陽光発電はさらなる節約効果を通じて、ガス価格の急騰による深刻な影響から消費者を守る役割も果たしています。

ここでは3つのシナリオを検討してみましょう。1つ目は、電力価格が戦前の水準にとどまる基本シナリオ(2024年を基準年とする)、2つ目は、ガス価格が現状(既に高水準)にとどまるシナリオ、そして2つは、紛争が激化し、ガス価格が2022年のエネルギー危機時の水準まで上昇するシナリオです。以下では、ドイツにおける2つの事例研究を通して、それぞれのシナリオを概説します。

太陽光発電は、風力発電(27%)、石炭(20%)に次いで、2025年には電力ミックス全体の18%を占めるドイツで3番目に大きな電力源です。6 ドイツはEU最大の(そして世界で5番目に大きい)太陽光発電市場であり、2025年には累積太陽光発電容量が118 GWを超えます。2019年以降、ドイツでは企業向けPPA契約で3.4 GWの太陽光発電容量が締結されており7、ケーススタディ1で説明されているように、大規模企業が安定した価格で太陽光発電を調達できるようになっています。さらに、過去4年間で、数千の企業が、多くの場合バッテリーストレージ(蓄電設備)と組み合わせた太陽光発電システムを導入し、電力網への依存度を下げています。ドイツ国内の太陽光発電設備の3分の1以上は、商業用(250kW以上のシステム)に設置されており、事例研究2で紹介されているシンデレ酪農場のような企業の広い屋上に設置されています。現在、ドイツにおける太陽光発電は、このような中小企業約20万社分の電力を供給しています。

5. ドイツにおける家庭および産業向け電気料金の動向 | BDEW
6. エンバー(2026年)。
7. RE-Sourceプラットフォーム:PPA取引追跡ツール。

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このレポート(英語版)は以下のリンクからダウンロード可能です。

https://www.solarpowereurope.org/insights/thematic-reports/solar-and-storage-for-eu-energy-security

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また関連記事として、SolarPower Europeが同日の2026年4月1日に発表しました分析レポート「新たな研究結果:中東紛争勃発以来、太陽光発電はヨーロッパで1日あたり1億1000万ユーロ(205.7億円)以上を節約している。原題: New research: Solar power saving Europe more than €110 million a day since Middle East conflict began」もございます。ご興味のある方は、下記リンク(英語版)よりご参照下さい。

リンク先: https://www.solarpowereurope.org/press-releases/new-research-solar-power-saving-europe-more-than-110-million-a-day-since-middle-east-conflict-began

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日本の太陽光発電設備は2025年末時点で、累計で約80GW設置されております。発電所の建設コストは年々下がってきておりますが、単純に建設コストを30万円/kWとすると、1MWで3億円(30万円/kW x 1000kW)、1GWあたり3000億円(3億円/MW x 1000MW)となり、80GWの累計建設コストは24兆円と想定できます。

一方、ヨーロッパの累積導入量は約400GWと日本の約5倍となっております。ヨーロッパのガス価格に対する年間の削減効果が346億ユーロ(約6.47兆円)なので、累積導入量の割合で日本がその5分の1相当とすると1.3兆円の効果がある、と評価できます。

輸入元が多様化されている天然ガスと異なり、石油輸入元は今回の注目されているホルムズ海峡・中東エリアが圧倒的に多い状況にあります。電気自動車・EVトラック等の導入量の増加によるメリット、石油ベースの火力発電所での石油削減量によって、太陽光発電設備由来の電力の活用は日本全体に多岐にわたってメリットを提供している事と考えております。

それぞれのエネルギー源の特徴を活用するのと同様に、弊社は専門企業として太陽光発電設備や蓄電設備の導入と活用について引き続き取り組んでまいります。

謝辞: 太陽光発電の様々な充実したレポートを発行するSolarPower Europe及び関係者の皆さまに感謝の意を表します。

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